羨望

脆弱な あまりにも脆弱な僕ら

政治の腐敗 経済の破綻

自然の脅威に晒され 問い直す

隔離 人権 南京錠

危機的状況における 特効薬は

現在のところなさそうだ

社会規範を刷り込まれ 内在化する私という思考

疫病 地震 津波 豪雨 気候変動etc

危機的状況において

僕らを動かすのは 羨望

浮き彫りになる 羨望

羨望は社会を動かす 差別する 攻撃する 

匿名だから顔は見えない 正体不明

 

それでも 僕ら 問いを立てる

ただ その場を凌いだり やり過ごしたり

してるだけじゃないんだよ

反社会でも 非社会でもない やり方で

補助線を引くんだよ

強い者が弱い者を虐げて支配するスピードが加速する

僕ら弱いけれど 弱いことは悪いことじゃない

その方向へ シフトしないといけないな

誰かの悲鳴を聴いて プライベートをサーフする

 

夏詣

蝉の声を聴きながら

茹だる様な暑さの中

石段を登る

汗だくになりながら

この町で一番高い場所へ

 

冷房の効いた部屋でネットの生活は

快適ではあるが 実感が乏しくていけないな

 

この場所で一番高い場所で

シャラリーンシャラシャラと

音がするので 見上げると

100の風鈴が 1000の風に吹かれているのを

僕は見た

手を合わせ 亡き人を想い

何度目かの夏を実感したんだよ

再会

息苦しくて

エタノールの部屋を出て

漂白剤の街を抜け出して

呼吸をしたいがために

メトロに乗って

30年前の新宿へ

 

午前零時

コマ劇場前では

口から火を吹くファット

花を売る女

アコーディオン

パントマイムをするスリム

詩を読む青年

白塗りの劇団員

聖歌隊の合唱

絵を描く男

猥雑に熱気を放つ解放区

 

20歳の原風景を 忘れられずに

年齢を重ねて メトロに乗って

同じ場所 違う風景に居たんだよ

そこに絵を描くを初老の男が居たから

まさかと思いながらも 声をかけたら

「久しぶり」って 彼が言った

 

息苦しくて メトロに乗って 新宿コマ劇場

呼吸をしたいがために いまここを離れて

再び出会う

 

 

 

終末と週末

名もなき市井の週末ですが

これだけ暗いニュースが多いと

これだけ嫌なニュースが続くと

明るい未来を描きにくかったりして

ヤバイ夜の週末に終末の臭いを嗅ぐ

 

そこから逃げるかのように

大人買いした蒲焼さん太郎シリーズでビール

黄色い電車での通勤途中に車窓から

気になっていた煙突へ 公衆浴場

銭湯 柳湯

風呂上がりの 雨上がり 数年ぶりの

ドクターペッパー

日本映画ファンシーを観ながら

私立探偵濱マイクを思い出し

ニヤニヤ ニコニコ

終末と週末

ニュースが全てじゃないと吹く風と

名もなき市井の歌を歌う

 

天使

バイアスがかかっており バイパスが閉じている

そのため 魚になって夜を泳いでいたら

水槽が膨張して BANGと弾けて 危うく死ぬところでしたが

それでも 朝になれば コーヒーを飲みたくなり タバコを吸いたくなり

気分が悪いまま 寝ぐせのまま 顔も洗わず 

それでも マスクは忘れずに コンビニに向かう途中

そんな朝 双子のベビーカーを押す母親が視界に入ったんだよ

左側のベイビーが不機嫌にしかめっ面をしていて

右側のベイビーがニコニコと笑っていて

それを見てたら 何とも言えない気持ちになって 

ちょっと幸せな感じで おかしくて笑ってしまったのでした。

トロッコ列車

加速する情報化のスピードに既に取り残されている

田んぼに水が張られ 緑色の稲が風に揺れている

加速するデジタル化のスピードに既に振り落とされている

クローバーが咲き その周りをモンシロチョウが飛んでる

 

僕は 正確な円を描けない

僕は 正確な線を引けない

 

ヨーロッパはアジア大陸の岬になると言ったのは

ヴァレリーだったな

 

東京から離れた分だけ 時間がゆっくりと流れ

トロッコ列車は カタカタと

 

自然には直線がないというのは確かに

そうだな フラクタルかな

 

ゴッホの糸杉が 教会の造形と重なるのは

不思議だな

 

トロッコ列車に カタカタと揺られ

気が付いたら ちょっと眠っていたんだよ

heavy air

ある男がきれいな水を探し求めていたんだよ

彼らは水を売って暮らしてる 彼らの顔は見えない

彼らの声は聴こえない 彼らと集団により

ある男は追放され 監視され 孤独の中 死んだ

 

重い空気に世界が徐々に動かくなる

重い空気に世界が徐々に動けなくなる

重い空気に視界が徐々に狭くなる

バイアスがかかってる 抑圧が加わる

 

強い風が吹き 水になり 流れていければよいのだが

強い風が吹き 音になり 動き出せればよいのだが 

 

タワーマンションに住む彼女 ノルウェーから直輸入の

ミネラルウォーターで暮らしている

土の感触が恋しい 空には住めない

彼女はきれいな水を探し求めているんだよ

そして僕は ある朝 マンホールから汚水が

噴出されるのを見るだろう