息苦しくて
エタノールの部屋を出て
漂白剤の街を抜け出して
呼吸をしたいがために
メトロに乗って
30年前の新宿へ
午前零時
コマ劇場前では
口から火を吹くファット
花を売る女
パントマイムをするスリム
詩を読む青年
白塗りの劇団員
聖歌隊の合唱
絵を描く男
猥雑に熱気を放つ解放区
20歳の原風景を 忘れられずに
年齢を重ねて メトロに乗って
同じ場所 違う風景に居たんだよ
そこに絵を描くを初老の男が居たから
まさかと思いながらも 声をかけたら
「久しぶり」って 彼が言った
息苦しくて メトロに乗って 新宿コマ劇場前
呼吸をしたいがために いまここを離れて
再び出会う